「そのうち、とは、いつのことなのか」。
by.田中啓文
外出しようとしている知人と、
ふいに出会った際、
例えば、「どちらへ?」とか、
「お出掛けですか?」という具合に、
声を掛けられることがある。
そんなとき、
「はい、ちょっと、そこまで…」と言うような、
少し曖昧(あいまい)な言葉が、
人間関係を潤滑に保つのに都合が良かったりもする。
広辞苑で「そのうち」と言う言葉をひくと、
「近いうち」とか、「近日」とある。
けれど、「そのうちに、やります」と言いながら、
いっこうに、そのことに取り掛からない人は、
少なくはない。
そうして、
そういう自分も、
「そのうちに、また、お会いしましょう」と言って別れた友人と、
なかなか会わなかったりもする。
けれど、それなりの友人関係を保つには、
その«曖昧さ»が、良循環の手助けをしてくれることもある。
ビジネスの場に限らず、
正確さや具体性が求められている時に、
「そのうちに」とか、
「ちょっと、そこまで」と言うわけにいかないことは、
言うまでもない。
言葉へのこだわり、言葉の使い方は、
ケース・バイ・ケース、ということだろうか。
田中啓文は、日本の作家。