「2012年末から5年半に及ぶ経済回復が、戦後最長に迫る」。
2018年度の「経済財政報告(経済財政白書)」。
経済成長が続く一方、人手不足の悪影響が一部の産業で現れ、
経済成長の制約になる、と指摘している。
社会人教育や技術革新による生産性の向上が重要だとし、
総体では、政策運営の成果を強調している。
白書は、人工知能(AI)などデジタル技術が浸透する未来を示し、
「今、Society(ソサイエティー)5.0の経済へ」とサブテーマが付いた。
景気回復は、2002年~2008年の6年1カ月に次いで、
戦後2番目の長さになった可能性が高い、として
「世界経済の回復」
「雇用・所得環境の改善」
「企業の新技術への投資」
「都市再開発」がその要因になっている、とした。
外需に依存していたと言われる2000年代と違い、
多少の外的ショックには耐えられる、としながら、
企業がもつ現状での設備や労働力では、
需要をさばけなくなりつつある」と指摘している。
企業の人手不足感は、1990年代前半以来の高さで、
運輸業などで影響が出ている、と報告。
将来、定型的な仕事が、
AI(人工知能)やロボットに置き換わっていく可能性にも触れ、
ITに対応できる人材育成が鍵だとも、指摘している。
また、企業の競争力を保つための情報通信技術の実用化や、
研究開発の国際連携が重要だと、提言。
一方で、
「物価はデフレを脱却し、安定的な上昇が見込まれるまでには至っていない」
「個人消費も力強さに欠ける」と認めて、
一段の賃上げの必要性を強調した。
世界の貿易は、2008年のリーマン・ショック後に停滞した後、
2017年ごろにかけて復調。日本には、輸出増という追い風が吹いた。
この間、日本の景気回復は、2012年12月から続いており、
2018年度の経済財政白書は、
外需の比重が高かった戦後最長の拡大期(2002年2月~2008年2月)よりバランスが取れている、
と指摘している。
半面、世界貿易に関しては、米国の制裁関税措置などを巡り、
過熱すれば、日本にも影響が及ぶ、とした。
経済財政白書は、米利上げによる市場の動揺を警戒している。
ネット通販にも焦点を当てた。
電子商取引(EC)の市場規模拡大に関して、
高齢者のネット消費の活発化も予想している。
AI(人工知能)と雇用の関係も分析。
新技術を使いこなす高度な仕事と、
人間を使った方が安上がりな仕事との″二極化″が進むという、
厳しい将来像も示唆(しさ)した。
「モノのインターネット(IoT)」の進展が影響してくると、みられる中、
「戦後最長の経済成長」がなるのか、
国内経済の今後の行方に注目が高まる。