こんにちは、halukaです。
好きな映画にも、いろいろな形があると思います。
躍動感にあふれた作品、
静寂を美しく映し出す作品。
雄大な自然を背景に描いて見せる作品。
スパイ、戦い、歴史、文学…
その分野を挙げ始めたら、
もう切りがないに違いありません。
もっと他にも、もちろんあって、
もつれた糸のような人間模様を、
丁寧にちぎれてなくならないように、
解いてみせる作品。
映画「リスボンに誘われて」は、
人間模様を野太く描いて、
街並を美しく見せて、
そこにある文学性を静かに語ってみせる、
そんな作品のように思います。
レトロな街中の雰囲気、
静寂と雑踏が入り混じる駅、
そんなあちらこちらに響く、靴音。
人生を歩み、進んでいくことに意味を持たせ、
そこに歴史と夢まで運んできてくれるような、
そんな気さえします。
主人公は、スイスで高校教師をしている初老の男性。
その名は、ライムント・グレゴリウス。
専門としている分野は古典文献学と、なにやら堅いイメージです。
その彼が、
これといった変哲もない毎日を送っていたある日の出来事。
出勤途中だった雨の中、
欄干から飛び降りようとしていた若い女性を目にし、
抱き助けます。
ライムントは、その女性を、
自分が勤務する学校の教室に連れて行きますが、
女性はコートを置いたまま、姿を消します。
残されたコートのポケットから出てきたのは、
1冊の古い本と、リスボン行きの列車の片道切符だけ。
ライムントは、
本に書かれた、ひと言、ひと言に魂を揺さぶられ、
その著者に会おうと、
そのままリスボン行きの夜行列車に飛び乗ります…
探し当てた、その本の著者アマデウは、しかし、
もう若くして亡くなっていました。
平凡だったライムントの人生は、そこから、
思わぬ方向へ動き始めます。
40年も前のポルトガルで起こっていたこととは、何なのか。
そこに描かれた、
若い反逆者たちの命懸けの反体制運動と、
同時に燃え上がった熱烈な恋愛物語。
ヨーロッパの雰囲気そのままに、
情緒豊かで、空気感さえ伝わってきそうな、
その駅のホームに響く靴音…
好奇心の虜(とりこ)となったライムントを、
「運命の逆転」でアカデミー主演男優賞を得た、
ジェレミー・アイアンズが、見事なはまり役として演じます。
魂の旅と呼んでいい、その展開とともに、
人生の新たな発見が、どれほど素晴らしいものか、
その衝動の物語を描く名作だと思います。