競い合う相手がいると、闘志ががぜん湧き起こり、
自分でも思わぬ力を呼び覚ますことがある。
ライバルという存在は、疎(うと)ましくもありながら、
時には貴重でありがたいものであり、心惹(ひ)かれるものだ。
映画「ラッシュ プライドと友情」は、
自動車レースの最高峰、F1の世界に生きるライバル同志、
2人の天才レーサーが主人公。
実話を基に「アポロ13」のロン・ハワード監督が描いた人間ドラマ。
F1黄金期の1976年、チャンピオンを競い合っていたのは、
自由奔放で享楽的なジェームス・ハントと、
緻密な頭脳派のニキ・ラウダ。
ドイツ・グランプリで、悪天候を理由にレース中止を主張するラウダ。
しかし、ラウダを追うハントたちの反対で、レースは決行される。
そんな中、ラウダは、瀕死(ひんし)の重傷を負う事故を起こす。
自分の主張が招いたライバルの危機に心を痛めるハント。
刹那的な生き方の一方で、
繊細な面をもつハントをクリス・ヘムズワースが好演。
現場復帰に執着し、
過酷な治療に耐えるラウダの姿を
ダニエル・ブリュールが迫真の演技で見せる。
事故から42日後、ラウダはサーキットに舞い戻る。
2人の最終決戦の地は、日本。
豪雨の富士スピードウエイだった。
相反する気質の2人。
死と隣り合わせの命懸けの危険なレースに魅せらせたライバル同志。
尊敬と友情、憎しみがドラマとしての濃厚な化学反応を引き起こす。
爆音を響かせ、猛スピードで走り抜けるマシン。
レーサー視線のスリリングなショット。
本物のF1レースを思わせる臨場感が圧巻の一作です。