大竹しのぶさんならではの柔らかな温かさと、
宮崎あおいさんの演技が溶け合う。
母1人、子1人で生きてきた、母の陽子と娘の月子。
ある日の深夜、酒に酔ってご機嫌の陽子が、
研二という名の若い茶髪の男を連れて帰宅する。
「おかあさん、この人と結婚することにしたから」。
唖然(あぜん)とする月子をよそに、
「今日からこの家で一緒に暮らし始めるのよ」と続ける陽子。
話を聞くと、陽子と研二の2人は、3年前から付き合っているのだという。
なぜ急に、そんな勝手なことができるのか。
なぜ今まで、内緒にしていたのか。
月子にとってはまさに″寝耳に水″。
月子は、事態を理解できないまま、
母・陽子のあっけらかんとした態度に憤りさえ感じてしまう。
すっかりふてくされた娘・月子だったが、
外見とは違う研二の人柄の良さに、
かたくなだった月子の気持ちも和らいでいく。
だが、結婚式の衣装合わせに出掛ける日の朝、陽子は倒れる。
がんを患い、医師から余命を宣告されていた陽子だったが、
月子には話せないでいたのだった。
呉美保監督が描いた家族物語。
母と娘の日常の中にあるこまやかな感情を表現して、
人の生きる姿が丁寧に描かれている。
大切な人だからこそ、ぶつかり合う。
当たり前の日常にある幸せ。
母と娘がそのことに気づいていく、そんな温かな一話。